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平成21年度【問31】の正解は(1)と思う


更新:平成21年10月21日

(1)イントロ

迷物講師も今年の本試験を受けましたが,【問 31】は1を選びました。
つまり事例ア・イは誤っているが,ウは正しいと考えました。

各方面で今話題になっているのは,事例ウですが,これは正しい肢だと考えます。
以下,事例ウの問題文をドリル風の文章に直して,私の見解を書かせて頂きます。
 

(2)平成21年【問 31】事例ウ

宅地建物取引業者Aが自ら売主として、B所有の甲宅地を、宅地建物取引業者でない買主Cに売却しようとしている。
宅地建物取引業法の規定によれば、Aは、甲宅地の売買が宅地建物取引業法第41条第1項に規定する手付金等の保全措置が必要な売買に該当するとき、Cから受け取る手付金について当該保全措置を講じておけば、Cとの間で売買契約を締結することができる。[私の答はマル肢]
 

(3)事例ウは「自己の所有に属しない物件の売買禁止(8種規制)」の問題

1.

自己の所有に属しない物件(宅地または建物)は,原則売買禁止ですが,
Ⅰ.
他人所有(他人物)の場合は,その他人(本問ではB)から物件を取得する契約(買取契約)を結んでいれば,売買できます(宅建業法第33条の2,1号)。
Ⅱ.
工事完了前(未完成物件)の場合は,手付金等の保全措置を講じていれば,売買できます(宅建業法第33条の2,2号)。

2.

本問の問題文は,受験者の方には非常に分かりづらい!
「宅地建物取引業法第41条第1項に規定する」という部分です。

第41条第1項に規定するのは,工事完了前(未完成物件)の場合の,手付金等の保全措置なんです。
だから,事例ウの甲宅地は工事完了前(未完成物件)です。

そうすると,事例ウは上記Ⅱ.の話になり,宅建業者Aは手付金等の保全措置を講じておけば売買できるのでマル肢になる,と試験会場では結論づけました(10/21現在も変わってません)。
 

(4)各方面で今話題になっている原因を,勝手に想像してみる

1.「自己の所有に属しない」という言葉の意味の誤解?

自己の所有に属しないというのは,普通の言葉では「自分の物じゃない」ということです。

注意しなければならないのは,
  自分の物じゃない = 他人所有(他人物)
という図式は,成り立たないということです!
なぜならば,日本語では,「誰の所有にも属していない物」も,「自分の物じゃない」と言えるからです。

その「誰の所有にも属していない物」が,実は,工事完了前(未完成物件)の場合なのです。
この点,昭和55年12月1日,当時の建設省不動産業課長通達でも,「宅建業法第33条の2,2号の,いわゆる青田売りの場合,完成物件の所有権は売買の時点では存在しないため、自己の所有に属しない物件の売買に該当する」と表現してます。

本問に引き直せば,甲宅地は,未完成の段階(AがCに売る時点)では,完成物件としての所有権は,存在していません。AがCに売る時点では,Bでさえ,甲宅地の所有者じゃないんです!
未完成段階での本問の土地は,甲宅地という名前の所有権としてはこの地球上に存在していないという意味で(これは私が教材で使っている言葉です),「誰の所有にも属していない」のです。

したがって条文上は,
・上記Ⅰ.(宅建業法第33条の2,1号)は,完成物件としての他人所有(他人物)だけが
・上記Ⅱ.(宅建業法第33条の2,2号)は,工事完了前(未完成物件)だけが
その射程範囲になります。

つまり,「他人物は常に完成物件を指し,未完成物件に他人物が混じることは有り得ません」。未完成物件の他人物売買なんて,法理論上,観念しえないのです

2.条文を逸脱した解釈?

私たちは法律の勉強をしていますが,ここで言う法律の勉強とは,国会等のお上が作ってくれた条文を解釈することです。
いくら社会正義に反するからといって,私たちが勝手に条文を作ることは出来ません。

正義感で言えば,宅建業法の目的はお客さんの保護(8種規制では素人の買主の保護)なので,事例ウについて,「手付金等の保全措置さえ講じていれば売れる」と結論づけたんじゃ,釈然としない人も結構いるでしょう。手付は戻って来るかも知れないけれど,Cの期待が裏切られる(当てにしていた物件が手に入らない)危険性は変わりないですもんね。

でも,私たちが勝手に条文を作ることは出来ないので,
・上記Ⅰ.(宅建業法第33条の2,1号)は,完成物件としての他人所有(他人物)だけが
・上記Ⅱ.(宅建業法第33条の2,2号)は,工事完了前(未完成物件)だけが
その射程範囲になる,という決まりを崩すことはできません。

だから,素人の買主を厚く保護したくても,上記Ⅱ.の場面(事例ウ)なのに上記Ⅰ.を適用(ないし準用)するのは,「自己の所有に属しない」という言葉の意味も加味すると,勝手に条文を作ることになっちゃう,と考えざるを得ません。
ここは,おそらく法の不備(立法論の問題)なのでしょう。 

(5)ホントの正解肢は不明

ホントの正解肢は正式発表まで不明です。以上は,一介の宅建講師の見解に過ぎません。
平成21年12月2日(水),試験実施機関は正解を(1)と発表しました。


平成21年【問 31】原文

【問 31】 宅地建物取引業者Aが自ら売主として、B所有の宅地(以下この問において「甲宅地」という。)を、宅地建物取引業者でない買主Cに売却する場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものの組合せはどれか。
ア Aは、甲宅地の造成工事の完了後であれば、Bから甲宅地を取得する契約の有無にかかわらず、Cとの間で売買契約を締結することができる。
イ Aは、Bから甲宅地を取得する契約が締結されているときであっても、その取得する契約に係る代金の一部を支払う前であれば、Cとの間で売買契約を締結することができない。
ウ Aは、甲宅地の売買が宅地建物取引業法第41条第1項に規定する手付金等の保全措置が必要な売買に該当するとき、Cから受け取る手付金について当該保全措置を講じておけば、Cとの間で売買契約を締結することができる。
1 ア、イ
2 ア、ウ
3 イ、ウ
4 ア、イ、ウ


宅地建物取引業法 第33条の2 [自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限]

宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。ただし、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
1号
宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているときその他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令で定めるとき。
2号
当該宅地又は建物の売買が第41条第1項に規定する売買に該当する場合で当該売買に関して同項第1号又は第2号に掲げる措置が講じられているとき。




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